概要
2017年3月26日、4月16日、30日に、日本学術振興会(以下、学振)の特別研究員へ応募するための申請書の作成を支援するワークショップを実施しました。
ここでは、申請書を作成する人をメンティー、その作成を支援する人をメンターと呼びます。全3回で作成者のべ44名、メンターのべ25名、計69名のワークショップとなりました。
今回のワークショップは2016年度ワークショップの反省を活かし、申請書作成のポイントを全体共有するため、申請者1名が前で自分の申請書について説明し、そのコメントを全体で行う全体レビューの時間を設けました。
ワークショップは、オリエンテーション、全体レビュー、ピアレビュー、申請書レビュー、メンタリング、振り返りの流れで行われました。
参加者のチームおよびグループ編成
このワークショップでは、メンター1人とメンティー最大2人のチームを作りました。
また、チームを2つ合わせたグループも作りました。
後述するピアレビューはグループで、メンタリングはチームで行いました。
ワークショップの具体的な流れ
13:00~13:20 オリエンテーション
WSの趣旨や流れの説明、参加者の自己紹介が行われました。
13:20~14:00 公開レビュー
まず、メンティーのボランティアを募り、1名前に出てきていただき、メンティーが作成したワークシートを用いて内容に関する説明(5分間)をしてもらいました。
その後、申請書の改善に関する議論(10分間)をまずチームで行いました。そして、それをふまえてどのような議論が行われたかを全体で共有し、合わせて申請書を作成する具体的なコツも共有しました。
14:00〜15:00 ピアレビュー
今度はグループに分かれ、メンティーがワークシートを用いて内容に関する説明(5分間)をした後、申請書の改善に関する議論(9分間)を行いました。
グループは、基本的にメンティーが4名、メンターが2名で構成されているため、上記のプロセスを4回繰り返しました。
ワークシートを用いて、内容の構成やロジックに改善点がないかを中心に議論しました。
15:00~15:30 申請書レビュー
次のメンタリングに入る前に、申請書を読む時間を設けました。
グループは、基本的にメンティーが2名、メンターが1名で構成されているため、メンターはメンティー2名分の申請書、メンティーはもう1名の申請書を読み、改善点を考えました。
15:30~17:45 メンタリング
メンターとメンティーが一対一で1時間を目安に申請書の改善に関する対話(メンタリング)を行いました。
メンタリングを受けていないメンティーはその様子を PC でメモし、適宜フィードバックも行いました。
17:45~18:00 振り返り
ワークショップを振り返り、学んだことを共有しました。
ワークショップの良かった点、改善できる点
前回の反省を活かし、申請書に関する全体での議論ができたことは非常に良かったと思います。
全体レビュー後に、ワークシートや申請書のレビューをする時に、「全体レビューでもあったように…」とひもづけられることによって、全体レビューの時の議論の復習にもなり、申請書作成のポイントをより身につけてもらえるように感じました。
3年間にわたる実施および改善により、ワークショップ自体の設計は質が高くなってきましたが、事前課題に改善の余地があります。
事前課題用にワークシートやチェックシートを用意しているのですが、使われた具体例がないため、どのように書けば良いのかわからない、という声がありました。
そこで、今後はワークシートやチェックシートの具体例を提示する必要があると感じました。
また、メンターによる申請書の評価をしていないため、ワークショップを通してどの程度質が向上したかも不明確です。
現在、自己評価用にチェックシートを用意していますが、メンターがそれを用いて担当の申請書をチェックするのは負担が大きい状況です。
そこで、実際に用いられている評価基準などを用いることにより、申請書の質を可視化することが肝要だと感じました。
おわりに
まだ改善の余地があるワークショップではありましたが、多くのメンティーが満足してくれていたようでした。
また、メンターも申請書の作成のコツを共有することができ、満足されている様子でした。
それらをふまえると、全体としてはやって良かったと感じています。
今後も、今回の反省を活かして、よりよいワークショップを作っていきたいと思います。
(付録)ワークショップ実施の背景
日本学術振興会特別研究員は、研究者になる上で重要な肩書きと言っても過言ではありません。実際、特別研究員になった者を対象にした5年経過後調査では、80.5%が「常勤の研究職」に就いています(日本学術振興会 2015)。
また、特別研究員の申請書を作成することを通して、研究内容や計画が洗練されていくことを、一度でも書いた方は感じられたのではないでしょうか。
そういった意味では、特別研究員になること自体のみならず、申請書を作るプロセスにも価値があるといえます。
1人で試行錯誤しながら作成することも重要かもしれませんが、私としては作成に関して知恵があるならば、それを共有した方が、全体として申請書の質が向上し、ひいては研究の質が向上すると強く感じ、本ワークショップを企画、実施いたしました。
【参考文献】
日本学術振興会(2015)特別研究員-DCの就職状況調査結果について,https://www.jsps.go.jp/j-pd/data/pd_syusyoku/27_dcgaiyou.pdf(2017年4月3日参照)
(東大 FFP 1期生 吉田塁)