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2021年05月02日

【東大FFP第17期】なべたん日記・DAY_2 ”前編”

「てんこ盛りのDAY2を字数少なめでは伝えられない結果、”前編”となってしまいました」の巻
「次回・DAY2からのなべたん日記は、…(中略)…字数は少なめで…(汗)」という言葉で終わった前回でしたが、この回は、栗田先生自身もおっしゃっているように、そして素人目でも、かなり「てんこ盛り」です。エッセンスだけをコンパクトに、と思ったものの、何故に「てんこ盛り」なのかを冷静に考えてみれば、それだけ重要だからなわけで…ということで、前編と後編に分けることにしました(汗)

(1)「研究紹介」の振り返り
最初は、DAY1の課題(「自分の研究紹介」の1分動画を作成し提出)をやってみての感想を共有します(今日は3名から)。前回とのつながりを意識し、まずはオンラインの中でアウトプット(自分の経験を語るのでハードルは低い)する感覚を呼び覚まします。そういう意味では、DAY2のアイスブレイク的なものでもありますが、「研究紹介」は次につながる大事な要素なので。それは後ほど。

(2)今日の授業の目的と到達目標/全体の中での位置付け
毎回の「型」ですね…「型」の話は、以前の「なべたん日記」で(笑)

(3)ワーク「統計学はやっぱり嫌い?」;教授にアドバイス
”とある教授”のお困り状態へのアドバイスを考えてくる、という前回の課題について、事前視聴の動画「モチベーション;期待価値理論」から期待・価値・環境の三要素の視点で、まずは、個人で考え、それをグループ共有のGoogle Slide上の付箋に書き出し、グループワークとして、互いの意見をとりまとめ、そして追加することはないかを検討します。
このワークは、この後出てくる「反転学習」の体験にもなっています。まずは経験し、それから解説を聞く、という順番、「型」になっていますね。そして、今回のDAY2の大きなテーマの1つである「モチベーション」への導入でもあります。

(4)大前提
学生が主体的に学んでいくためには、モチベーションの喚起と維持は重要かつ必須である」という言葉がスライドに示されています。
【ひとりごと】本当にこのことを(大)前提としているかどうかは、授業者のあり方として、かなり決定的な差異を生んでいるのではないかと実感することが、これまでの教育現場との関わりの中では、多々ありました。今一度、初中等教育の現場の方達とも話題にしていきたいですね。

(5)モチベーションのモデル「期待・価値・環境」
先のワークを受け、そして「大前提」を確認した上で、モチベーションについてのモデルの1つとして紹介されます(リンク1リンク2)。限られた時間での説明ですが、受講生の方達はすでに十分な予習がありますので、かなりすっと入ってくることになりますね。この項の最後のスライドにある、「授業者にできること;学生にとって高い価値を考える・学生の期待を高める工夫をする・協力的な環境をつくりだす」という3点は、大前提に基づく大切なポイントであり、模擬授業のデザインのベースになっていきますね。
モチベーションに関するモデルはいろいろあるそうですが、もうひとつ紹介されているのが ARCSモデルです。今回は、その動画の紹もありましたので、みなさんもどうぞ♪
【ひとりごと】相応に学習者のモチベーションは意識していたけど、こういう明確な項目立てがなかったので、やっぱりやっていたことはぼやけていたと思うし、明確な項目立てができていないと、振り返る視点もぼやけていたから、授業改善をモチベーションという視点で明確に進めたという意識が持てていなかったですね。今、もし授業者になったら、ここはかなり明確にして取り組みたいと思えるところです。初中等教育の現場のみなさん、いかかですか?

(6)クラスデザイン(授業設計)の意義
クラスとは毎回の授業のこと、コースとは一連の授業のまとまり)。身近な例としては、東大FFP(全8回)はコース、DAY1・DAY2…はクラス、ですね。
クラスデザインを行う意義について、次のようなことが示されていました。
・限られた時間を効率的に活用できる ・目的・目標に適った授業方法をとることができる ・授業改善を行いやすい ・工夫の共有が容易になる ・学生のモチベーションがあがる
【ひとりごと】初中等教育の現場の方達と「授業設計(クラスデザイン)の意義と、その意義は誰にとってのものか」という視点で議論をした際に挙がったのは、次の4つの視点でした。
 a-授業時間の効率的利用 (学習者・授業者)
 b-教授手法の計画的活用 (学習者・授業者)
 c-知識とスキルの共有 (授業者間)
 d-授業改善の効果的な対象抽出(授業者・授業者間)
aとbを、学習者にとっての意義ととらえているのは、今求められている「授業は、授業者が教える場ではあるけど、大切にしたいのは、学習者が学ぶ場である」ことを早速反映しているなと思いました。冷静に考えれば当たり前のことなのですが、これまでに見た光景としては、授業者だけが授業計画を知っていて、知らない学習者は、授業者から示されるものにただただついていく、というものでしたので。あ、自省を込めてです(汗)
しかし、話はここで終わらず、次のような意見が一人の小学校の教員から提案されました。
「dについても、授業が学習者にとって学びの場であるということからみて、学習者と(設計した)授業者の間で行われるべきものだろうし、学び合うことが当たり前になっていく中では、学び方を学ぶという視点でとらえると、学習者同士の間でも大切にしていくことですよね」
ということで、
 d-授業改善の効果的な対象抽出(授業者・授業者間、授業者-学習者間、学習者間)
と書き換えてみました。
実際に、私自身もその小学校の授業を定期的に拝見してきましたが、単元計画が教員から児童へ提案されていく中で、児童から「なぜその活動に3時(とき;授業単位、コマ数のことですね)使うんですか? これまでの感じだと2時で足りると思います」などの意見が出る教室でした。「学習者主体」という表現はあちこちに見られるようにはなってきましたが、授業者と学習者がそれぞれの立場を尊重しながらも、共に授業を創るという点で、大切な姿だと実感しました。

(7)ADDIEモデル(インストラクショナルデザインのモデル)
では具体的にクラスデザインはどのように進めればよいのか。そのひとつのモデルとして示されたのが、このADDIEモデルです。
詳細はリンク先の動画を見ていただければと思いますが、Analysis 分析→Design 設計→Development 開発/実装→Implementation 実施→Evaluation 評価→Analysis 分析→…というように、「次に活かす」”CLOSE THE LOOP ! ”で、ADDIEADDIEA…と繰り返されますが、反復なサイクルというよりも成長・変化するスパイラルなイメージですね。そして、単純な一方向の流れではなく、それぞれの間で絶えず行き来するとともに、Evaluationは、クラスやコースの最後に行って次に活かすだけでなく、ADDIの各段階に対して適宜行う評価、という意味も含まれています。(ここでは評価の方法として、自己評価・学生評価・第三者評価が示されますが、「評価」自体はDAY4のテーマとして、より深く扱われます)
【ひとりごと】先ほど述べた、初中等教育の現場の方達との「授業設計」に関する議論の中で、当然、このADDIEモデルをお示しして検討をしましたが、ほぼ参加者が口を揃えておっしゃっていたのが、
「Development は、俗にいう”教材研究”と称して、かなり丁寧に時間をかけ、また、Implementation は、”指導技術”と称して、結構、教員研修のテーマとしても取り上げている、つまり手間隙はかけているけど、Analysis とDesign は、やっていないわけじゃないけど、そんなに手をかけていなかったなと、実感しましたね」
ということでした。そして、
「Analysis とDesign がゆるゆるだと、結局、Development とImplementation に手間暇かけても、本当の意味で、授業者に見合った授業になっていなくて、教員が自分のやりたい授業をやっているだけになりがちだよね」
「そして、Evaluation は、学習者の出来不出来を評価ばかりになりがちで、不出来なときに、Development とImplementation の評価というか見直しはするけど、それ以上にならないのは、授業設計の段階で、Analysis とDesign がゆるゆるだからだろうね」
ということで、参加者のみなさんは、今一度、自分の授業設計において、ADDIEの視点でとらえ直そう、特に最初のAとDを強く意識してみたい、とおっしゃっていました。
そんなこともあり、現在、学校現場のみなさんにADDIEモデルを紹介して一緒に考えようという懇談の時間をつくっています。よろしければご連絡ください(と宣伝)。実際に、先に述べた小学校では、校内研修のテーマとして取り上げていただいております♪ 成果が楽しみですね♪

(8)クラスデザインシートの作成演習の第一歩・ワーク「達成目標の設定」
次は、いよいよDAY6・DAY7「模擬授業」の設計(クラスデザイン)の最初の一歩である「達成目標の設定」のワークです。ちなみに模擬授業は「自分の研究領域に関わる1トピックを学ぶ6分間」です。ここでもまた応募のときに書いた「研究紹介」が自己紹介、動画作成と経て、ずっとつながってきています。また「1トピックを6分間で」というのは、栗田先生曰く、授業の構成要素を含むぎりぎり最小の姿、とのこと。さまざまな模擬授業のスタイルやその研究がある中で、この東大FFPのコース設計(与えられた時間や人数などの環境条件)を踏まえた上での、最善の選択のようです。
このワークに先立って、授業を作る上で(ADDIEモデルにおいても)重要な「目的と到達目標」についての解説がありますが、これもやはり以前の「なべたん日記」で紹介しました。また、関連して紹介があった、Bloomの教育目標分類Finkの「意義ある学習」分類については、私の個人的な関心で、リンクを貼っていますので、ご興味があればどうぞ。
さらに、授業構成のためのヒントとして、ガニエの9教授事象、そして、知識の体系化(グラフィックシラバスの提示、意識的な知識の関連付け)などが紹介されます。ちなみに、意識的な知識の関連づけは、すでにDAY1・DAY2の中でも、繋がりは明確に示されてきましたし、この後のDAY3以降にも、ここまでの話がさまざまな形でつながっていきますので、引き続き、お楽しみに♪

さて、DAY2はこの後「アクティブラーニング」へと進みますが、最初に述べた通り、DAY2はてんこ盛りなので(加えて【ひとりごと】が長かったので・汗)、今回はこの辺で。

ではまた。(DAY3までに”後編”を出しま〜す! と宣言)

あ、前回も紹介しましたが、東大FFPについては、次のリンク先に解説や2020年度開講の授業等が紹介されていますので、ぜひご参照くださいね。
(公式)東大FFPサイト
東大OCW 大学教育開発論(東大FFP2020年度開講分)
インタラクティブ・ティーチング(動画サイト)

大学総合教育研究センター
FFP担当 研究支援員 鍋田修身

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