東京大学 大学総合教育研究センターでは、 特任准教授(または特任講師)と事務補佐員を募集しております。
案件ごとに業務内容や応募資格、契約期間などが違いますので、ご確認の上でご応募ください。
- 教員応募の締切 : 2021年6月30日(水)
- 事務補佐員応募の締切: 2021年6月7日 (月)
詳しくはこちらをご覧ください。
【人材募集】大学総合教育研究センター教職員募集のお知らせ – 東京大学 大学総合教育研究センター (u-tokyo.ac.jp)
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東京大学 大学総合教育研究センターでは、 特任准教授(または特任講師)と事務補佐員を募集しております。
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【人材募集】大学総合教育研究センター教職員募集のお知らせ – 東京大学 大学総合教育研究センター (u-tokyo.ac.jp)
2019年度「東大院生・若手教員によるミニレクチャプログラム 第14回」を、東大TVで公開しました。
東大院生・若手教員によるミニレクチャプログラム 第14回 | UTokyo TV (todai.tv)
詳しくはこちらをご覧ください。「東大院生・若手教員によるミニレクチャプログラム 第14回」を公開
2019年度「東大院生によるミニレクチャプログラム 第13回」を、東大TVで公開しました。
東大院生によるミニレクチャプログラム 第13回 | UTokyo TV (todai.tv)
詳しくはこちらをご覧ください。「東大院生によるミニレクチャプログラム 第13回」を公開
「てんこ盛りだけど、授業に必要な要素満載のDAY2もあと半分。”後編”でございます」の巻
さて後編ですが、その前に前編の復習!(笑)
大事なことは繰り返すことで、自然と身につきます(これも前回の話題にありましたね♪)
という前編は、
(1)「研究紹介」の振り返り
(2)今日の授業の目的と到達目標/全体の中での位置付け
(3)ワーク「統計学はやっぱり嫌い?」;教授にアドバイス
(4)大前提
(5)モチベーションのモデル「期待・価値・環境」
(6)クラスデザイン(授業設計)の意義
(7)ADDIEモデル(インストラクショナルデザインのモデル)
(8)クラスデザインシートの作成演習の第一歩・ワーク「達成目標の設定」
ということで、クラスデザイン(授業設計)のために必要な大前提と枠組みに関する知識のてんこ盛りでしたが、単にこれらの知識が栗田先生から受講生のみなさんに伝えられるだけでなく、受講生が考え、アウトプットする時間が常に用意されていました。それが「アクティブラーニング」ですね。ということで、後編では、DAY1・2で”経験してきた”アクティブラーニングについて学びます。
(9)アクティブラーニングの定義
冒頭はいきなり「アクティブラーニングって何? って言われたら、どう説明しますか?」という問いが示され、Sli.do(匿名性の高い質問ツール)に受講生のみなさんが回答し、全員で共有します(って、これ自体もアクティブラーニング♪)。みなさんの回答は実に多様。それを受けて、栗田先生からも「いろんな人がいろんなところでいろんなことを言っているんですよね」と、そのいろいろな定義から3つ紹介されました(スライド51)。
【ひとりごと】 アクティブラーニングという語自体は、日本では高等教育改革の場で示されていましたが、その後、初中等教育に向けても、「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について(諮問)平成26年11月20日」が発せられてから、急速に話題となり、その諮問に基づく議論ののちに生まれた「平成29年・30年改訂 学習指導要領」では、「主体的・対話的で深い学び」として示されました。
今回、DAY2で文科省の定義(2012)に着目すると、「教員と学生が」主語になっているのは、 a-意思疎通を図る b-一緒に切磋琢磨する c-相互に刺激を与える d-知的に成長する e-場を創る ことであり、「学生が」主語になっているのは、 f-主体的に問題を発見する g-解を見出していく となっています。過去の私は、b・c・d・の主語は学生だけで、eが教員の仕事だと、自分の活動と照らし合わせて、勝手に解釈していました。結局、試行錯誤していくうちに、b・c・dも、教員である自分自身も、気づけば学習者と共に主語になっていましたが、最初のこの定義と出会ったとき、丁寧に読んで自分の授業を捉え直していれば、試行錯誤はもっと短縮できたかなと、当時の生徒さんたちには申し訳なく思っています。
(10)アクティブラーニングのポイント
「アクティブラーニングを促す方法は、目的ではなく手段」
手段がいつの間にか目的にすり替えられてしまうことは、教育に限らず、よくあることですが(汗)、“前編”、そして以前の「なべたん日記」でもお伝えした「目的と到達目標」は極めて重要であり、それを手段とすり替えてしまうことは、活動そのものの価値を失うことにもなりますので、常に注意しておく必要があります。
栗田先生からは3つの大切な視点(問い)が提供されています。
・授業の目的・目標に対応しているか?
・学生の学びに寄与する方法になっているか?
・学生の視点で、彼らのモチベーション・学力・関係性への配慮があるか?
この3つの問いは、アクティブラーニングであるかどうかを問わず、授業の設計から実施の全てについて、絶えず授業者は意識していくべき大切なものだと思います。
(11)アクティブラーニングの有効性
双方向の授業と一方向の授業について、授業前と授業後の学生(成績上位・中位・下位)のテストスコアの比較がグラフ(スライド53)で示され、「そこから読み取れるものは何か?」という問いが投げかけられます。例によって、受講生のみなさんはSli.doへアウトプット。みなさんもぜひどうぞ♪
このグラフ自体はテストスコアですが、未修得者の減少やモチベーションの向上など、一方向の授業より、さまざまな面で成果が大きいことが、いろいろな研究結果によって支持されていることは、見逃せませんね。
(12)アクティブラーニングの危うさ
成果・有効性が示される一方で、危惧される状況も生じています。基本的には、(10)で示されたポイントで実施されているかどうかが鍵になりますね。
【ひとりごと】 現場の教員だった頃、いろいろな教室でアクティブラーニングと称される授業を拝見する機会がありました。自省も込めてですが、そういう中で、アクティブラーニングと称されるものの危うさを感じることは数多くありました。
そのとき意外と見落とされがちなのが、”前編”でお伝えした「クラスデザイン(授業設計)」です。アクティブラーニング、「主体的・対話的で深い学び」は、あくまでも手法ですので、それ以前にまず「目的や到達目標」が必要です。さらには、学習者の状況や学びの環境についての「分析」も欠かせません。ある小学校の先生が、そのような危うさは、「アクティブラーニング以前の問題(略して”以前問題”)ではないか」と指摘されたことは、実に的を射たものでした。今であれば、”前編”の「大前提」とADDIEモデルのAnalysis・Designが不十分ではないかと、お互いに言語化できますね。
(13)アクティブラーニングの方法
ここまでのアクティブラーニングの「前提」を踏まえて、具体的な方法の紹介と体験に進みます。
方法には、ミニッツぺーパー、自己評価、ピアレビュー、ブレインストーミング、ジグソー法、ケーススタディ、PBL、TBL、ポスターツアー、など、さまざまな規模や様態のものがあります。ここでは次の3つが丁寧に取り上げられました。
(A)問いかけ;学生に質問を投げかける
(B)Think Pair Share;テーマについて1人で考えて、ペアで共有する
(C)Peer Instruction;短い講義・予習→多肢選択問題ConsepTest実施→学生同士の議論→解説
ご興味のある方は、スライド56〜66をご参照ください。
いずれの方法を扱うにしても、(10)に示したポイントとも重なりますが、次のことが実施上の留意点として伝えられました。
1-手段の目的化を防ぐ。活動させることを目的としない
2-活動の目的および目標を明確にもつ
3-AL導入のメリットを説明する
共同で活動すると学習が促進されることも実証されています(Johnson & Johnson,2009)
4-指示出しは具体的にする
What、How、How longを明確にし、Whyも伝えるとより良い
大事なことは繰り返すの、原則ですね♪
【ひとりごと】 初中等教育の現場でも「グループワークでは、声の大きい生徒、積極的な生徒ばかりが発言し、そうじゃない生徒は聞いているだけになる」という話をよく聞きますが、学習者に応じた授業設計をしていくことが、そういう場合も大切になりますね。具体的な手法の一例として、(A)問いかけ、(B)Think Pair Share などを段階的に(スモールステップで)取り入れることで、安心して発言できる学びの場を創ることは可能になるでしょう。
一方で、このような一人や二人のアクティブラーニングでも、授業者は丁寧に設計・準備し、臨機応変の対応などが必要です。特に授業の開始段階では尚更ですね。授業が進むにつれて、学習者が要領を得ると共に、授業者からの支援を外していくこと(足場外し・これもいずれ出てきます)も大事になりますが、最初はやはり学習者の状況を把握しつつ、丁寧に支援していくこと(適切な足場かけ)が大事になるでしょうね。あ、再び自省を込めてです(汗)
(14)クラスデザインシートの作成
“前編”でもお伝えしましたが、「対象は初学者、自分の研究分野から1トピック、6分間の授業」の設計です。これがDAY6・7の模擬授業の設計にもなります。受講生のみなさんには、前半で設定した「到達目標」を実現するクラスデザインを、専用のシートを用いて作成します。ここまでに相当量の情報が提供されていますが、これらを具体的な形にしていく、ということでもありますね。まず15分間、個人でシートの作成に集中し、その後、ブレイクアウトルームで互いのシート(当然未完成でしょうが)を共有し、6分間ずつ説明し合うことで、アウトプットしながら整理をつけたり、問題点に気づいたり、新たな知見を得たりします。
この作成自体は5月5日締切の課題になりますが、まるごと課題にせずに、少しでも自分で取り組んだ後、一緒に学ぶ仲間と共有・対話できることは、全部がまるまる自宅での課題になることと比べ、さまざまな違いを生みます。ゆえに、この時間が短くてシートが完了しなくても、とても大切な15分間と交流の12分間になります。
(15)DAY2の授業デザインの解説
東大FFPで学ぶ内容が、常に、この授業自体で表現されていますので、まるごと体験しながら学んでいるのですが、そのことを実感する上でも、この「授業デザインの解説」は大切です。前の「なべたん日記」でもお伝えしましたが、毎回の授業の「型」でもありますね。今回は、
・DAY1の課題からDAY2の冒頭で「反転授業」を体験する
・クラスデザインで使う、授業の構成(導入・展開・まとめ)通りにDAY2も設計されている
・毎回、全体像(コースデザイン)を示してから各論や具体例(今回のテーマの位置付け)を示す
・最終成果物(クラスデザインシート)に、さまざまな課題や学びの内容は関連付けられている
・オンライン講座ではよく用いられる「相互評価」を課題として体験する
というポイントが示されました。まだ二回分ですが、授業のさまざまな内容が実に結びついていることが確認できます。
以上、DAY2”後編”もてんこ盛りでした。しかし、てんこ盛りになるということは、ここで伝え、可能な限り体験しておくことが、今後の授業に向けて必要だということですね。先ほど述べた通り、これまでのこともこれからのことに繋がっていきます。
今回は最後に【ひとりごと】を。
私自身の学校現場での活動を振り返ると、DAY2の内容をもっと早くに知っていれば、試行錯誤はもっと短くて済んだだろうに…と率直に思います。大学教員になるには免許制度がなく、教育の技法についても学んでいないので…というのが、この東大FFPの意義のひとつだと理解していますが、初中等教育の教員免許取得のカリキュラム(教職課程)の中で、このようなことを学んでいるのかと言えば、少なくとも私たちの世代にはありませんでした。同世代で一緒に取り組んできた教員仲間の多くは、私も含めて、これらの知見をほぼ現場での試行錯誤、学習者である児童や生徒さんたちとの関わりの中で、経験から学んできました。たぶん、しなくてもよい失敗も多数あったと心から反省していますが、それが現実でした。では、今はどうでしょうか。先にお示しした新しい学習指導要領になり、新しい教育が求められる中で、このような知見を、現場へ出る前に、あるいは、現場にいる間に学べる機会がどこかで提供されることを、切に願うばかりです。知識は実践に活用してなんぼ、ではありますが、知らないことによる悲劇は、どんな世界にもあります。知ることで救われることは本当にたくさんあると、咋期のDAY2が終わったとき、私は心底感じました。
ではまた。
あ、毎回くどいですが(汗)、東大FFPについては、次のリンク先にいろいろ紹介されていますので、ぜひご参照くださいね(大事なことは繰り返す、の図)。
(公式)東大FFPサイト
東大OCW 大学教育開発論(東大FFP2020年度開講分)
インタラクティブ・ティーチング(動画サイト)
大学総合教育研究センター
FFP担当 研究支援員 鍋田修身
「てんこ盛りのDAY2を字数少なめでは伝えられない結果、”前編”となってしまいました」の巻
「次回・DAY2からのなべたん日記は、…(中略)…字数は少なめで…(汗)」という言葉で終わった前回でしたが、この回は、栗田先生自身もおっしゃっているように、そして素人目でも、かなり「てんこ盛り」です。エッセンスだけをコンパクトに、と思ったものの、何故に「てんこ盛り」なのかを冷静に考えてみれば、それだけ重要だからなわけで…ということで、前編と後編に分けることにしました(汗)
(1)「研究紹介」の振り返り
最初は、DAY1の課題(「自分の研究紹介」の1分動画を作成し提出)をやってみての感想を共有します(今日は3名から)。前回とのつながりを意識し、まずはオンラインの中でアウトプット(自分の経験を語るのでハードルは低い)する感覚を呼び覚まします。そういう意味では、DAY2のアイスブレイク的なものでもありますが、「研究紹介」は次につながる大事な要素なので。それは後ほど。
(2)今日の授業の目的と到達目標/全体の中での位置付け
毎回の「型」ですね…「型」の話は、以前の「なべたん日記」で(笑)
(3)ワーク「統計学はやっぱり嫌い?」;教授にアドバイス
”とある教授”のお困り状態へのアドバイスを考えてくる、という前回の課題について、事前視聴の動画「モチベーション;期待価値理論」から期待・価値・環境の三要素の視点で、まずは、個人で考え、それをグループ共有のGoogle Slide上の付箋に書き出し、グループワークとして、互いの意見をとりまとめ、そして追加することはないかを検討します。
このワークは、この後出てくる「反転学習」の体験にもなっています。まずは経験し、それから解説を聞く、という順番、「型」になっていますね。そして、今回のDAY2の大きなテーマの1つである「モチベーション」への導入でもあります。
(4)大前提
「学生が主体的に学んでいくためには、モチベーションの喚起と維持は重要かつ必須である」という言葉がスライドに示されています。
【ひとりごと】本当にこのことを(大)前提としているかどうかは、授業者のあり方として、かなり決定的な差異を生んでいるのではないかと実感することが、これまでの教育現場との関わりの中では、多々ありました。今一度、初中等教育の現場の方達とも話題にしていきたいですね。
(5)モチベーションのモデル「期待・価値・環境」
先のワークを受け、そして「大前提」を確認した上で、モチベーションについてのモデルの1つとして紹介されます(リンク1・リンク2)。限られた時間での説明ですが、受講生の方達はすでに十分な予習がありますので、かなりすっと入ってくることになりますね。この項の最後のスライドにある、「授業者にできること;学生にとって高い価値を考える・学生の期待を高める工夫をする・協力的な環境をつくりだす」という3点は、大前提に基づく大切なポイントであり、模擬授業のデザインのベースになっていきますね。
モチベーションに関するモデルはいろいろあるそうですが、もうひとつ紹介されているのが ARCSモデルです。今回は、その動画の紹介もありましたので、みなさんもどうぞ♪
【ひとりごと】相応に学習者のモチベーションは意識していたけど、こういう明確な項目立てがなかったので、やっぱりやっていたことはぼやけていたと思うし、明確な項目立てができていないと、振り返る視点もぼやけていたから、授業改善をモチベーションという視点で明確に進めたという意識が持てていなかったですね。今、もし授業者になったら、ここはかなり明確にして取り組みたいと思えるところです。初中等教育の現場のみなさん、いかかですか?
(6)クラスデザイン(授業設計)の意義
クラスとは毎回の授業のこと、コースとは一連の授業のまとまり)。身近な例としては、東大FFP(全8回)はコース、DAY1・DAY2…はクラス、ですね。
クラスデザインを行う意義について、次のようなことが示されていました。
・限られた時間を効率的に活用できる ・目的・目標に適った授業方法をとることができる ・授業改善を行いやすい ・工夫の共有が容易になる ・学生のモチベーションがあがる
【ひとりごと】初中等教育の現場の方達と「授業設計(クラスデザイン)の意義と、その意義は誰にとってのものか」という視点で議論をした際に挙がったのは、次の4つの視点でした。
a-授業時間の効率的利用 (学習者・授業者)
b-教授手法の計画的活用 (学習者・授業者)
c-知識とスキルの共有 (授業者間)
d-授業改善の効果的な対象抽出(授業者・授業者間)
aとbを、学習者にとっての意義ととらえているのは、今求められている「授業は、授業者が教える場ではあるけど、大切にしたいのは、学習者が学ぶ場である」ことを早速反映しているなと思いました。冷静に考えれば当たり前のことなのですが、これまでに見た光景としては、授業者だけが授業計画を知っていて、知らない学習者は、授業者から示されるものにただただついていく、というものでしたので。あ、自省を込めてです(汗)
しかし、話はここで終わらず、次のような意見が一人の小学校の教員から提案されました。
「dについても、授業が学習者にとって学びの場であるということからみて、学習者と(設計した)授業者の間で行われるべきものだろうし、学び合うことが当たり前になっていく中では、学び方を学ぶという視点でとらえると、学習者同士の間でも大切にしていくことですよね」
ということで、
d-授業改善の効果的な対象抽出(授業者・授業者間、授業者-学習者間、学習者間)
と書き換えてみました。
実際に、私自身もその小学校の授業を定期的に拝見してきましたが、単元計画が教員から児童へ提案されていく中で、児童から「なぜその活動に3時(とき;授業単位、コマ数のことですね)使うんですか? これまでの感じだと2時で足りると思います」などの意見が出る教室でした。「学習者主体」という表現はあちこちに見られるようにはなってきましたが、授業者と学習者がそれぞれの立場を尊重しながらも、共に授業を創るという点で、大切な姿だと実感しました。
(7)ADDIEモデル(インストラクショナルデザインのモデル)
では具体的にクラスデザインはどのように進めればよいのか。そのひとつのモデルとして示されたのが、このADDIEモデルです。
詳細はリンク先の動画を見ていただければと思いますが、Analysis 分析→Design 設計→Development 開発/実装→Implementation 実施→Evaluation 評価→Analysis 分析→…というように、「次に活かす」”CLOSE THE LOOP ! ”で、ADDIEADDIEA…と繰り返されますが、反復なサイクルというよりも成長・変化するスパイラルなイメージですね。そして、単純な一方向の流れではなく、それぞれの間で絶えず行き来するとともに、Evaluationは、クラスやコースの最後に行って次に活かすだけでなく、ADDIの各段階に対して適宜行う評価、という意味も含まれています。(ここでは評価の方法として、自己評価・学生評価・第三者評価が示されますが、「評価」自体はDAY4のテーマとして、より深く扱われます)
【ひとりごと】先ほど述べた、初中等教育の現場の方達との「授業設計」に関する議論の中で、当然、このADDIEモデルをお示しして検討をしましたが、ほぼ参加者が口を揃えておっしゃっていたのが、
「Development は、俗にいう”教材研究”と称して、かなり丁寧に時間をかけ、また、Implementation は、”指導技術”と称して、結構、教員研修のテーマとしても取り上げている、つまり手間隙はかけているけど、Analysis とDesign は、やっていないわけじゃないけど、そんなに手をかけていなかったなと、実感しましたね」
ということでした。そして、
「Analysis とDesign がゆるゆるだと、結局、Development とImplementation に手間暇かけても、本当の意味で、授業者に見合った授業になっていなくて、教員が自分のやりたい授業をやっているだけになりがちだよね」
「そして、Evaluation は、学習者の出来不出来を評価ばかりになりがちで、不出来なときに、Development とImplementation の評価というか見直しはするけど、それ以上にならないのは、授業設計の段階で、Analysis とDesign がゆるゆるだからだろうね」
ということで、参加者のみなさんは、今一度、自分の授業設計において、ADDIEの視点でとらえ直そう、特に最初のAとDを強く意識してみたい、とおっしゃっていました。
そんなこともあり、現在、学校現場のみなさんにADDIEモデルを紹介して一緒に考えようという懇談の時間をつくっています。よろしければご連絡ください(と宣伝)。実際に、先に述べた小学校では、校内研修のテーマとして取り上げていただいております♪ 成果が楽しみですね♪
(8)クラスデザインシートの作成演習の第一歩・ワーク「達成目標の設定」
次は、いよいよDAY6・DAY7「模擬授業」の設計(クラスデザイン)の最初の一歩である「達成目標の設定」のワークです。ちなみに模擬授業は「自分の研究領域に関わる1トピックを学ぶ6分間」です。ここでもまた応募のときに書いた「研究紹介」が自己紹介、動画作成と経て、ずっとつながってきています。また「1トピックを6分間で」というのは、栗田先生曰く、授業の構成要素を含むぎりぎり最小の姿、とのこと。さまざまな模擬授業のスタイルやその研究がある中で、この東大FFPのコース設計(与えられた時間や人数などの環境条件)を踏まえた上での、最善の選択のようです。
このワークに先立って、授業を作る上で(ADDIEモデルにおいても)重要な「目的と到達目標」についての解説がありますが、これもやはり以前の「なべたん日記」で紹介しました。また、関連して紹介があった、Bloomの教育目標分類、Finkの「意義ある学習」分類については、私の個人的な関心で、リンクを貼っていますので、ご興味があればどうぞ。
さらに、授業構成のためのヒントとして、ガニエの9教授事象、そして、知識の体系化(グラフィックシラバスの提示、意識的な知識の関連付け)などが紹介されます。ちなみに、意識的な知識の関連づけは、すでにDAY1・DAY2の中でも、繋がりは明確に示されてきましたし、この後のDAY3以降にも、ここまでの話がさまざまな形でつながっていきますので、引き続き、お楽しみに♪
さて、DAY2はこの後「アクティブラーニング」へと進みますが、最初に述べた通り、DAY2はてんこ盛りなので(加えて【ひとりごと】が長かったので・汗)、今回はこの辺で。
ではまた。(DAY3までに”後編”を出しま〜す! と宣言)
あ、前回も紹介しましたが、東大FFPについては、次のリンク先に解説や2020年度開講の授業等が紹介されていますので、ぜひご参照くださいね。
(公式)東大FFPサイト
東大OCW 大学教育開発論(東大FFP2020年度開講分)
インタラクティブ・ティーチング(動画サイト)
大学総合教育研究センター
FFP担当 研究支援員 鍋田修身
東大フューチャーファカルティプログラム(Future Faculty Program =FFP)の8回(DAY8)「SAPチャート作成によるキャリアパス展望」の講義映像が、UTokyo OCWで公開されました。これによって、東大FFPのすべてがOCWで公開されました。
詳しくはこちらをご覧ください。
東大FFP (DAY8)がOCWで公開! – 東京大学 大学総合教育研究センター (u-tokyo.ac.jp)
SAPチャート作成によるキャリアパス展望 | UTokyo OpenCourseWare (u-tokyo.ac.jp)
東大FFP 第17期も、インターネットを活用したリアルタイムの授業(Zoomによるオンライン授業)で開講いたしました。
第17期は、新型コロナウィルス感染症が収束しない厳しい環境下にもかかわらず、大変多くのみなさまにご応募いただき、61名(木曜・金曜クラス合計)の受講者と9名の他機関からのオブザーバーでスタートいたしました。
東大FFPとして、第15期からオンライン授業へ全面的に移行するとともに、教育のオンライン化の先導者としての役割を担うべく、引き続き、知恵を出し合い、さまざまな工夫をこらしながら、東大FFPらしいオンライン授業を行ってまいります。
「書こう書こうと思うだけでは筆は進まず、気づけば16期が終わり17期が…(汗)」の巻
最後の日記は11月18日…すでに4月15日(木)16日(金)で、17期 DAY1がスタートしておりました(汗)深い反省を込めて、前回(5ヶ月以上も前)の続きから話を進めたいと思います。
前回のなべたん日記でお伝えしたことは、次の3点でした。
(1)授業には毎回共通した、明確な「型」がある。
(2)授業者から学習者(受講者)への支援の度合いが徐々に低くなっていく。
(3)授業で学ぶ内容(コンテンツ)が、ワークなどの実体験として、随所に設定されている。
(1)については、東大FFP全体としてだけでなく、各授業での『目的・到達目標』もご紹介しましたが、「型について、実はもうひとつある」などと思わせぶりなことを書いて、そのままにしておりました(汗) 今回はこれらの話とつなげながら、DAY1-Introductionについてご紹介します。(紹介といってもDAY1後半の「高等教育の現在」などの部分には触れていませんので、内容全体にご興味のある方は、のものをご参照ください)
introductionの語源は、intro-(〜の内側に)ducere(to lead / to guide)とのことですが、目的と到達目標を示してleadしつつも、丁寧にguideされています。guideといえば、今期の東大FFP説明会で紹介された”From Sage on the Stage, To Guide on the Side”(King,A. 1993)ですね。この東大FFPを受講されるみなさんのon the Sideでguideするって感じです。〔英語苦手なのに、この段落、多いわ~〕
前回紹介の(2)でいえば「支援の度合い」が高いDAY1ですが、この後、少しずつ着実に「手放し」ていきます。それは受講生の皆さんの学び手としての主体性を大切にすることにもつながりますね。この授業だけでなく、8回の授業を通しての『設計』がそこにちゃんとあります。これはいずれ紹介される『コースデザイン』でまた。
【ひとりごと】初中等教育でも、今、「学習者主体」という言葉がひとり歩きする中、最初から「手放し」という光景は少なくないです(自戒を込めて)。しかし、そこに学習者の状態を想定して、どのようにどこまで関わるのか、という『設計』があるかどうかは大きな点ですね。そして学習者の状況に応じて、その『設計』をベースにしつつも授業のリアルは臨機応変に、そして、『設計』自体も随時見直していく、ということの連続ですね。このあたりは次の授業で紹介される『ADDIEモデル』で詳しく。
そんな『設計』は、1回の授業の随所に施されています。特にDAY1は、授業者と学習者も初対面ですし、学習者同士も、ほぼ初対面です。しかし、授業者と学習者をつなぐ系だけの授業構造ではなく、学習者同士をつなぐ系が大切な授業でもありますので、その『設計』は非常に巧妙にできています。そのあたり、以下でお伝えしますけど、字数多めでご容赦ください(先にいっておこう)。
最初の活動は、「今日の体調はいかがですか?」「画面に出ている人をみて、顔見知りは何人いますか?」という問いかけから。この回答は、Zoomの投票機能(匿名)を使って、選択肢から選ぶだけ。さくっと気楽に答えられるもので、オンラインでの発信(アウトプット)に慣れていってもらいます。
次はブレイクアウトルームで初対面の人との交流へと進みます。いわゆるアイスブレイクなのですが、ここでの活動は『自己紹介からの他己紹介』です。
話す内容は「東大FFPへの参加動機」です。これについては、東大FFPの応募の際に200字で提出が求められている、つまり一度は言語化されていますので、1分間ほどで自分の発言内容を整え、それからブレイクアウトルームに2人ずつ入って、互いに伝え合います(この『Think-Pair-Share』という手法も次回詳しく)。
大事なのはこのあとです。
2人での自己紹介が終わったら、今度は2つのペアを合体して、4人のグループとして、再びブレイクアウトルームへ。そこでは、今、ペアで聞いたばかりの自己紹介を、他のペアの方に紹介する、つまり『他己紹介』を行います。インプットしてのアウトプットです。相手の話を丁寧に聞き取り、それを他者へ丁寧に説明することが求められます。最初のペアでの自己紹介は、かなり真剣に聞き合うことになります。ある意味、逃げ道がない聞き取りです(笑)
当然、『他己紹介」までの流れを説明していますので、焦る必要はないですが、覚悟して臨む聞き取りです。でも、そうやって丁寧に聞き取ってくれることは、話す側としてもとても親密感がもてますよね。なんとなくの自己紹介だけをすることとは、決定的な違いがあります。実際、興味深いことは、初対面同士のはずの関係性が、この活動を通して不思議とよくなっていくことですね。受講者同士のよい関係をつくるための、授業者側の丁寧な工夫だと、私は思っています。
加えて、話は前後しますが、「互いに学び合うための協力的環境づくり」として、東大FFPでは次のグランドルールがあります。
• 「さん」づけで呼びます(大学院生と現職教員が共に学ぶ仲間として壁を作らない工夫です)
• どんなことからでも学べる(失敗や転ぶことからの学びは大きいということで、栗田先生も私も転びまくっています=ある種の安心感もセットで…汗&笑)
• 相手の話を関心をもってよく聴く(いわゆる傾聴の姿勢ですね)
そして最後に
・相手への発言は 3K( 敬意を持って・忌憚なく・建設的に)で
初回DAY1は、この『他己紹介』まで、丁寧に時間をかけて行いますが、その効果は大きく、受講生の声としても反映されています。そして、さまざまなところで関係性の良い交流が増していきます。そのような土壌づくりがここまでの「設計」にありますね。
このあと休憩が入り(ストレッチもあります!)、次は、自己紹介のテーマを「自分の研究分野の紹介」とし、今度は最初から4人のグループで行います(もうすっかり馴染んでいますね)。これも東大FFP応募の際に「200字で他の分野の人にもわかるように」書いていただいていますので、短時間ですぐに対応はできるようです。
ちなみに、この自己紹介を実施する前に、「なぜ、授業の最初に授業者は受講生に向けて”自己紹介”をするのか」という、その意義や価値についての問いがあり、その問いへの受講者の声(匿名)がGoogle Formに入力され、spreadsheetで共有されます(オンラインだとさくっとできますね)。実は、この自己紹介、単なる先程までのアイスブレイクの延長ではなく、今後、受講者の方達が授業者になるときに、学習者の「モチベーション」づくりなどに大きく影響すると言われています。このあたりは、『期待価値理論』(1・2)や『ARCSモデル』といったモチベーションの話が次回でてきますので、そこでまた。そして、DAY6・7で実施する『模擬授業』にむけても、コンパクトでインパクトのある「自己紹介」は大切になります。
そう、これが5ヶ月以上前にお伝えした(3)ですね。まず「経験」の場が提供されます。この「経験」が次の「学び」の段階で「あ、あのときにやったことだよね」となり、経験と学びが紐づきます。物事を理解し、自らの「学びの体系」を作る上で、とても大切なことになります。
DAY1 Introductionは、これからの学びと紐づく大事な経験を得ながら、初顔合わせの人たちが、オンラインという画面上でのみ関わる環境の中で安心してスタートできるように、guideするように設計されている、ということですね。
【ひとりごと】初中等教育の場で、学習者主体の授業で、授業者は何をするのか、というのがよく話題になっています。学習者が安心して学びにはいっていけるように、授業者が「学びの場」を丁寧に設計することは、授業者の責務でもありますね。Guide on the Side.には、さまざまな手立てがあると思います。「学びの場づくり」はこちらもぜひお読みください♪
さて、例によって長くなりました。
最後に、5ヶ月以上前の(1)で述べた「実はもうひとつある型」についてお伝えしましょう。
授業の最初に『目的と到達目標』が示され、当然、授業の最後にもそれが示されて『ふりかえり』の時間となります。これは、どんな授業にも共通する基本の型だと思いますが、東大FFPの各授業では、その最後に『デザイン』というスライドと説明が入ります。
DAY1では、
• “授業初回仕様”「互いを知る」から構成
• 体験ベース
• 問いかけ(Closed Question); ClosedからOpenへ
• 他己紹介; まずは二人組から慣らす
• Input-Output
と書かれていました。
つまり、「この授業をどのように設計したか」ということが最後に紹介されています。受講生の方が「授業の裏側を見せていただいた」と振り返りに書かれていましたが、分刻みでスケジューリングされた「授業設計書」と共に、授業づくりの舞台裏を受講生にお見せします。
それはなぜか…
だって、受講者の皆さんは、いずれ(あるいは今)高等教育の授業者になる方達ですからね。そのためのプログラムである東大FFPの中に、自分の受けた今日の授業の設計がどうなっているのかを伝える内容が含まれていることは、極めて目的に見合った大事なことだと思います。
ふぅ~、なんとか5ヶ月前の話を、今回のDAY1に紐づけられたかな…(汗)
次回・DAY2からのなべたん日記は、各回の授業の様子をフツーにお伝えしますね。字数は少なめで…(汗)
ではまた。
あ、東大FFPについては、次のリンク先に解説や2020年度開講の授業等が紹介されていますので、ぜひご覧になってください♪
(公式)東大FFPサイト
東大OCW 大学教育開発論(東大FFP2020年度開講分)
インタラクティブ・ティーチング(動画サイト)
大学総合教育研究センター
FFP担当 研究支援員 鍋田修身
(NPO法人SOMA アドバイザー)
東京大学 大学総合教育研究センターでは、 特任准教授・特任助教などの教員を募集しております。
締切日は2021年3月31日(必着)、着任日は7月1日(予定)です。
詳しくはこちらをご覧ください。大学総合教育研究センター教員募集のお知らせ