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【8月28日開催】Coursera「インタラクティブ・ティーチング」オンラインライブイベントのお知らせ

東京大学 大学総合教育研究センターが展開するオンライン講座 Coursera「インタラクティブ・ティーチング」では8月28日(土)午後、オンラインライブイベントを開催いたします。

リアルタイムで開催される今回のオンラインイベントでは、受講者の皆さんと共に学習の場を共有し、一人で出来ないことを経験することを目的としています。

詳しくはこちらをご覧ください。【8月28日開催】Coursera「インタラクティブ・ティーチング」オンラインライブイベントのお知らせ



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【東大FFP第17期】なべたん日記・DAY_3

「高校関係者と議論している”評価”の話に偏っちゃって、今回も字数がまた多いぞ(汗)」の巻

ほぼ隔週の東大FFPの様子をお伝えする「なべたん日記」ですが、DAY2までは順調かに見えましけれど、極めて個人的な事情からまたしても失速し、大幅に遅れてしまいました(汗)。しかし、ここから挽回を図ろうと、目論んでおります。では早速♪

今回のDAY3(実施は5月6日・7日のGW明けでした・汗)_評価の「目的」と「到達目標」、そして「授業の流れ」は、次の通りです。

〔目的〕
 学生の学びを評価するための基礎知識を得て,評価の意義・特徴を理解し,学習に活用できるようになる
〔到達目標〕
 1.評価の意義を説明できる 
 2.形成的評価と総括的評価を対比できる
 3.ある評価方法について評価の性質という観点から説明できる 
 4.ルーブリックを作成できる 
 5.ルーブリックのメリット・デメリットについて考えを言える
〔授業の流れ〕
 0_授業後の「ふりかえり」から;メッセージ
 1_2つの復習;ワーク
 2_評価とは何か;レクチャー
 3_評価のコンサルティング;ワーク
 4_ルーブリックとは;レクチャー
 5_ルーブリック作成と実際の評価;ワーク
 6_ルーブリックのメリット・デメリット;ワーク
 7_今日の授業デザイン(毎度の「型」ですね);メッセージ

全体の構成として、DAY1・DAY2に比べ、受講者が活動する時間(ワーク)の割合が大きくなっています。

DAY2_クラスデザインの「アクティブラーニングの意義」にもあったように、学んでほしい大切なことは、やはりインプットだけでなく、必ずアウトプットする=実際にやってみることです。今回の目標から見れば「評価とは何か」を理解し、評価活動において重要なツールである「ルーブリック」の作成と利用を通して理解することですね。また、次のDAY4_コースデザインでも紹介されますが、授業者が意図して設置した学習者への支援=「足場」を、少しずつ外し、学習者に委ねる時間を増やしていきます。

前にもお伝えしましたが、この授業を受けること自体が、この授業で学ぶ知識の体験の場でもあります。

 

「評価の意義」

最近、私の周りでは「評価」が話題になっています。

私がずっと在籍していた高校の教育現場では、来年度から新しい学習指導要領(PDF)が実施されます。学習指導要領の改訂は10年毎にありますが、今回は、教育のあり方が大きく変わるよ、と中教審「論点整理」(PDF)などで示されてきました。それとともに「評価」のあり方も見直されていますので、高校現場の先生とさまざまな議論をしています。そこで話題になったことが、今回のDAY3で解説されている「評価の意義」でした。

東大FFPの授業では、次の3者の観点で「評価の意義」が示されています。

 ◯ 学習者〔児童・生徒・学生〕にとっての意義 ①到達度の把握、②学びの支援
 ◯ 授業者〔教員〕にとっての意義       ③学生の理解度の把握と支援、④授業の改善
 ◯ 組織〔学校・教育委員会〕にとっての意義  ⑤質保証、⑥説明責任
 *評価には、”成績”をつけただけではない価値がある
 *評価はゴールではなくスタートである

高校現場の先生の手元には、新しい学習指導要領の実施に伴って、学習評価の在り方ハンドブック・高等学校編(文部科学省・国立教育政策研究所)が配布されていますが、その中には、次の文が明記されています。

「生徒にどういった力が身に付いたか、という学習の成果を的確に捉え、教師が指導の改善を図るとともに,生徒自身が自らの学習を振り返って次の学習に向かうことができるようにする」

この文の「捉える」「図る」「できるようにする」の主語は、教員ですので、まずは「授業者にとっての評価の意義」と重ねてみましょう。

評価の意義③「学生の理解度の把握と支援」
・(教員は)生徒に…力が身に付いたか、という学習の成果を的確に捉える。(理解度の把握)
・(教員は)生徒自身が…次の学習に向かうことができるようにする。(支援)
評価の意義④「授業の改善」
・学習の成果を的確に捉え、教師が指導の改善を図る。

次にこの文の中から、学習者を主語とする部分を書き出すと、
・生徒自身が自らの学習を振り返る
・(生徒自身が)次の学習に向かう
となります。これを実現するためには、

評価の意義①「到達度の把握」
・何がどれくらいできたか/できなかったかを、学習者自身が把握できる
評価の意義②「学びの支援」
・到達度を把握した上で、次の学びをどう改善していくかを、学習者自身が見出すことできる

このように、学習者にとって意義のある評価であることが必要になります。

ハンドブックに示された「評価」のあり方を高校現場で目指すならば、今回のDAY3で示された「評価の意義」について、学習者と授業者の両面から捉えておくことは、評価のもつ「成績をつけただけではない価値」として大切なことですね。(組織としての評価の意義⑤、⑥も、高校現場で議論になるところですので、これはまたどこかでぜひ)

さて、高校教育から東大FFPの授業の流れに戻すと、「評価の意義」は、DAY2で学んだ「ADDIEモデル」にもつながります。

このモデルの5番目はEvaluation「評価」でした。この評価は、授業者にとって、毎回の授業や単元、1シーズンの科目など、さまざまなスパンでの「授業改善のための評価」になっています。一連のさまざまな活動(Analysis・Design・Development・Implementation)の流れが終わった段階で、ADDIの各活動についても見直しますが、それは同時に、次の活動サイクルへとつながる ”Close the Loop ! “、つまりスタートとしての位置付け評価はゴールではなくスタート」ですね。ちなみに、Iに至る”A-D-D”のでも、逐次振り返り、行き来しながら見直していきながら、進んでいくものでもありますが、それは次の「形成的評価」にもつながる話でしたね。

 

「総括的評価と形成的評価」

「評価といわれたら、この2つが同時に頭に浮かぶといいですね」と栗田先生。ではこの2つはどこが違うのでしょうか。まさに目標の2つ目、「対比できる」ですね。

 総括的評価「達成された学習成果の程度の把握を目的とする」
  ・合否判定などで用いられるものにもなり、学習の終了後に行われる
 形成的評価「学習プロセスの改善を目的とする」
  ・学習活動の逐次修正につながるフィードバックとしての意味が大きく、学習中に行われる

ここで、栗田先生が強調していたのは、「注意すべきは、この2つの要素を組み合わせて実際の評価は行われていくものであり、最も大事なことは、学習者の学びが円滑に進むために、どのようにこの2つの評価を組み合わせていくかを、授業者は常に考えていく必要がある」ということでした。

私自身は以前、成績判定は総括的評価、授業でのフィードバックは形成的評価と、違うものとして明確に区別し、この2つを排他的なものにとらえていました。しかし、栗田先生は「どちらか、というものではなく、形成的側面をもった総括的評価もあるし、その逆もありますよね」と。

確かに到達度を測り、それに基づいた合否判定や評定があったとしても、何が足りていて足りていないかを明確にすることで、次の学びへの改善につながっていくものを提供できる場面はありますね。二項対立的に捉えてしまうのではなく、「何を目的として評価をするのか」という視点で、この2つの評価の考え方でとらえていけるようにしたいですね。当然、この2つの評価のとらえかたも、授業者が主語であるだけでなく、学習者も主語になりますね。

 

「何を評価するのか」

さて、「評価」そのものをどうとらえるか、というところから、今度は具体的な実施という点で話を進めると、この問いは不可避ですが、実はここも高校現場の先生とは話題になりました。

東大FFPでは「知識・理解、思考・判断」「技能・表現」「関心・意欲・態度」という評価の対象が示されました。これは初中等教育では、従来の学習指導要領でも示された観点別評価とほぼ一致します。これらの大元はどこにあったかというと、DAY2で示された「ブルームの教育目標分類」、つまり知識(認知的領域)・スキル(精神運動的領域)・態度(情意的領域)になります。

新しい学習指導要領では、この「何を評価するのか」という評価の観点も変化しており(その背景は、最初にお示しした論点整理をご参照ください)、「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」となっています。特に、「主体的に学習に取り組む態度」については、DAY2で示された「フィンクの意義ある学習分類」と重なる部分が多いですね。英語の方が、意図は伝わりやすいと思いましたので、以下のような形でご紹介します。

【基礎知識 Foundational Knowledge】
   Understanding and remembering  ・information ・ideas
【応用 Application】
   ・Skill ・Thinking : Critical, creative, & practical ・Managing projects
【統合 Integration】

   ・Connecting : ・Ideas ・People ・Realms of life
【人間性 Human Dimension】

   Learning about : ・Oneself ・Others
【関心 Caring】

   Developing new ・Feelings ・Interests ・Value
【学び方の学習 Learning How to Learn】

   ・Becoming a better student ・Inquiring about a subject ・Self-directing learners

小学校・中学校で「総合的な学習の時間」、高校では「総合的な探究の時間」が設置されていますが、新しい学習指導要領を精読すると、この「時間」のあり方については、学校の教育目標と結びつくことが強く明示されており、従来の教科科目の学習とは違った位置付けになっていると読めます。そして、この「時間」で目指すものが、この「意義ある学習分類」にかなり含まれていることにも注目しておきましょう。

て、授業などの具体的な実践になると、ここに示された「評価の観点」という大枠とともに、具体的な「到達目標」が示されることが必要です。

授業者だけが評価者だったとしても、授業では「何を具体的な到達目標」として学習者は取り組み、「具体的に何が評価対象となるのか」を明らかにしておくことは、授業設計の段階(ADDIEモデルのDesign)で明確にしておくべきものです。ましてや、学習者自身も評価者ですので、授業者は、「具体的な到達目標」とともに「具体的な評価対象(そして評価方法)」も、学習者に明確に伝える必要があります。これらは次回のDAY4_シラバス・コースデザインにおいて、話題になりますが、初中等教育でも「目標と評価の一体化」という表現で、求められていたことですね。DAY2でも、「到達目標」について丁寧な説明とワークがあり、「到達目標は、観察可能な=アウトプットを表現する動詞で示し、評価項目になる」とされていました。

【関連して…】最近読んだ「14歳からの生物学 Your Biology(松田良一・岡本哲治 監訳、白水社)」という、オランダの13〜14歳向けの教科書では、各章(Unit)の最後に「まとめ」として「目標」が、その後に「テスト」が示されています。元生物教員として教科書の内容自体にも興味はありますが、「評価」という視点で、教科書に明確な「目標」と「知識の理解」を測るものがセットで示されていることに、強い関心を抱きました。

さらに具体的な授業を進めるにあたっては、「練習とフィードバックのサイクル;到達目標を定めた”練習”(知識を投入する活動)と、的を絞ったフィードバック(”練習”の結果に対して与えられる、次の行動の指針となる情報)を組み合わせることで、学習の質を高めることができる」が有効である、という紹介が栗田先生からありましたが、これについては、How Learning Works;大学における「学びの場」づくり〜よりよいティーチングのための7つの原理(玉川大学出版部)(の第5章)に詳しく述べられているという紹介だけでしたが、現場としては大事なところだと、その部分を読んで実感しています。

 

「どのように評価するのか」

評価方法は「到達目標」と表裏一体であり、設定した「到達目標」に適した評価方法を採ることが求められます。

今回のDYA3では、以下で示す「評価方法を評価するワーク」と「ルーブリックを作るワーク」に的を絞り、具体的な評価方法の紹介は省かれています。ご興味のある方は、ぜひ、「学習評価ハンドブック アクティブラーニングを促す50の技法」東京大学出版会(2020) をお薦めします。先程の「意義ある学習分類」に基づいて、さまざまな評価方法が紹介されている一冊ですので、「総合的な学習の時間/探究の時間」が学校の教育活動の幹に位置付けられていく中で、活用度の高い一冊だと思います。ルーブリックの実例も多数紹介されています。

話を戻して「評価方法を評価するワーク(評価のコンサルテーション)」について。

これは、「…な授業で、…な課題を出し、…のように評価をしているのですが、…な心配事があります」という”相談”(…は具体的に示されています)に対して、レクチャーの部分で学んだ、評価の方法、評価者、評価の評価(下記参照)の観点から考え、GoogleFormに自分の考えを記入してもらうワークになっています。

 <評価の評価>
 評価の信頼性:同じ集団に同質の試験を何回行っても同じ結果が得られるか(再現性と精度)
 評価の妥当性:用いる評価方法が測定対象となる能力や行動を測定できるか(適切性)
 評価の効率性:実施や採点が容易であるか(評価の時間的・経済的な実用性)

この3つのうちのいずれかに問題がある場合は、その改善案も提示するように求めています。

一定時間、受講者のみなさんがGoogleFormへ記入したら、集約されたサイトを全員で共有します。評価方法を変えることで、信頼性や妥当性、そして効率性を変えることができるといった、比較的明瞭な”相談”に取り組むワークなので、みなさん的確に回答されていました。

その中での栗田先生の一言、
「他者へのアドバイスはみなさんできるんですけど、いざ自分の授業になると、そのあたりがふっとぶ人(笑)は結構多いので、この基礎知識が雑学でなく、使えるようにしていただければと思います」
は、元高校教員の私には相当刺さりました(汗)

 

「ルーブリックとは何か」

「評価」に関する説明とワークで、3時間半の授業の1時間15分を使い、休憩・ストレッチをはさんで、残りの2時間がこのワークになります。かなりの時間をとりますが、栗田先生曰く「知っていることと作ることは、大違い」ですので、できるだけ作成に時間をとる、ということもあり、ルーブリックの基礎的なことは、動画視聴による事前学習となっています(反転学習ですね)。

 <ルーブリック動画>

とはいえ、高校現場でも「探究の時間」などを通して、ルーブリックの作成が話題になったり、実際に求められたりすることも増えていますので、そのようなことを踏まえて、大事だと思ったことをお伝えしようと思います。

ルーブリックとは「ある課題をいくつかの”構成要素”(評価観点)にわけ、その”要素ごと”に”評価基準”を満たすレベルについて詳細に説明したもの」です。栗田先生は「ここにルーブリックの価値が示されている」と述べられ、次の言葉を紹介されました。この言葉自体は、ルーブリックを用いる最初のステップについて記述したものです。

The first step in constructing or adapting any rubric is quite simply a time of reflection, of putting into words basic assumptions and beliefs about teaching, assessment, and scholarship.
どんなルーブリックを設計あるいは取り入れるとしても、最初のステップは、簡単に言えば、ティーチング・評価・学識について、基本的な前提や信念を言葉にし、自分に対して問い返して考える時間である。

ルーブリックは学習者のためのものでもありますが、第一に、授業者自身が、どのような前提や信念をもって、この課題に取り組むことを学習者に求めたのか、何を評価しようとしているのか、といったことを、ルーブリックの作成を通して「言語化(表出)する」ことで、自らに対して問い返す、そこにルーブリックの価値がある、ということでした。

ルーブリックが対応しない評価方法は、正誤が明らかな多肢選択回答問題だけであって、他のものには全て対応するし、評価の評価としては、信頼性・妥当性・効率性の全てを向上しうるものになっています。

ルーブリックの一般的な使い方は、次の流れになります。

 1_授業者がルーブリックを作成
 2_学習者に課題とルーブリックを配布
 3_授業者はルーブリックを学習指針として課題にとりくむ
 4_学生が課題を提出(ルーブリックによる自己採点も一緒に提出可)
 5_提出課題を授業者等が採点(ルーブリックがあれば授業者以外も可能)
 6_学習者にルーブリックによる採点とともに課題を返却

ルーブリックの作成に学習者が参加することも可能(ルーブリック作成自体が学びになりますね)、学習者同士の相互評価も可能(ルーブリックを通した評価活動による学習内容の理解の深化)になります。

授業者が自分の評価尺度としてルーブリックを隠し持つというのではなく、学習者に提示し、ある意味、学習活動の中でルーブリックの利用に、学習者をしっかりと巻き込んでいくことことで、さまざまな可能性が広がると感じました。当然、その前提として、授業者と学習者、学習者どうしの関係(学びの場)づくりは大切になりますね。

そのこととも関係しますが、ルーブリック自体は、学習活動の過程で利用すれば、学習の状況を示す文言が返されることにもなるので、形成的評価の側面を強くもつものになりますし、これで最終的な到達度を測ることになれば、「総括的評価」の計測方法として利用することもできます。ここでも「形成的評価」と「総括的評価」という両面でとらえておくことは大事ですね。

 

「ルーブリックの作成、メリット・デメリット」

ルーブリックについてとらえておくべきことが伝えられた後、作成の手順を確かめながら、ルーブリックを作成することになります。作成の手順についてはOCWの授業資料(PDF)などをご参照ください。

ここもただ作るのではなく、次のような構成でワークが進められます。

1_「ある課題のレポート4つ」について、自分なりと観点を(簡単に)決めて、10点満点で採点する(GoogleFormを利用)
2_この課題に関するルーブリックをグループで作成する
(ブレイクアウトルームに分かれたのち、GoogleSlide上で作成、評価観点は各自が決めたものを持ち寄って、協議して絞り込む)

3_他のグループのルーブリックを見て回る(ギャラリーウォーク)
4_再び自分のグループのルーブリックについてブラッシュアップする

5_そのルーブリックを用いて、最初に行った「ある課題のレポート4つ」を、を10点満点で採点する(GoogleFormを利用)

このような過程を通して、単にルーブリックを作るだけでなく、実際に使う、それもルーブリックのない評価活動と対比することができ、ルーブリックのメリットやデメリットなどを考える材料(経験)を効果的に得ることができます。

そして最後に、メリットとデメリットについて、グループで協議し、それをGoogleFormへ書き出すことで共有します。この際も「学習者にとって」「授業者にとって」という「評価の意義」における立場の双方についての視点で検討し、言語化していきます。このことを通して、評価活動の主語が授業者と学習者、双方であることを再び確認していくことができますね。

 

以上、またまた長くなってしまいましたが、前・後編に分けずに今回は1つでお送りしました。

授業の最後には、いつもの「授業のデザイン」というスライドで、今回の授業を構成する中で、授業づくりの工夫を紹介します。今回は次の4つでした。

・反転授業;
・・ルーブリックの基礎的なことを事前に動画視聴で学習
・事例に基づいたワーク;
・・「評価についての相談を受け、評価方法を評価する」ことで抽象度の高い知識を、具体的な事例を使って活用する場を提供する
・・「ある課題のレポートを採点する」ことを通して、ルーブリックについて作成し、考える

・変則的ギャラリーウォーク;
・・オンラインで他のグループの取り組みを見て回ることができる

・共有方法の変化性;
・・オンラインで他の学習者の声を共有するさまざまな方法と体験する

この授業に学習者として参加すること自体が、授業者としての学びを得る場でもありますので、この1枚のスライドの持つ意味は大きいなと思っています。

 

ということで、次回DAY4は「コースデザイン(シラバス)」です。
(ちなみに、実際の授業はもうDAY7「模擬授業のブラッシュアップ(二回目の模擬授業)」が終了しています・汗)

ではまた。

 

毎回紹介していますが、東大FFPについては、次のリンク先に解説や2020年度開講の授業等が紹介されていますので、ぜひご参照ください♪
(公式)東大FFPサイト
東大OCW 大学教育開発論(東大FFP2020年度)  インタラクティブ・ティーチング(動画サイト)

大学総合教育研究センター
研究支援員 鍋田修身

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「東大院生・若手教員によるミニレクチャプログラム 第15回」を公開

昨年10月29日に開催した2020年度「東大院生・若手教員によるミニレクチャプログラム 第15回」を、東大TVで公開しました。
東大院生・若手教員によるミニレクチャプログラム 第15回 | UTokyo TV (todai.tv)

詳しくはこちらをご覧ください。2020年度「東大院生によるミニレクチャプログラム 第15回」を公開


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【人材募集】大学総合教育研究センター教職員募集のお知らせ

東京大学 大学総合教育研究センターでは、 特任准教授(または特任講師)と事務補佐員を募集しております。
案件ごとに業務内容や応募資格、契約期間などが違いますので、ご確認の上でご応募ください。

  • 教員応募の締切   : 2021年6月30日(水)
  • 事務補佐員応募の締切: 2021年6月7日  (月)

詳しくはこちらをご覧ください。
【人材募集】大学総合教育研究センター教職員募集のお知らせ – 東京大学 大学総合教育研究センター (u-tokyo.ac.jp)

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「東大院生・若手教員によるミニレクチャプログラム 第14回」を公開

2019年度「東大院生・若手教員によるミニレクチャプログラム 第14回」を、東大TVで公開しました。
東大院生・若手教員によるミニレクチャプログラム 第14回 | UTokyo TV (todai.tv)

詳しくはこちらをご覧ください。「東大院生・若手教員によるミニレクチャプログラム 第14回」を公開

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ZOOM「イマーシブ ビュー」の紹介

オンライン授業やオンライン会議などで広く利用されているZOOM。その新機能「イマーシブビューの参加者全員での利用」が、4月末にリリースされました。Zoom 5.6.3以降で利用可能の機能です。

対面での授業中や会議中のワンシーンのように、参加者を仮想空間の中に表示することによって授業や会議に集中できる(没入=イマーシブ)効果があるようです。

詳しくはこちらをご覧ください。ZOOM「イマーシブ ビュー」の紹介 – 大学総合教育研究センター

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「東大院生によるミニレクチャプログラム 第13回」を公開

2019年度「東大院生によるミニレクチャプログラム 第13回」を、東大TVで公開しました
東大院生によるミニレクチャプログラム 第13回 | UTokyo TV (todai.tv)

詳しくはこちらをご覧ください。「東大院生によるミニレクチャプログラム 第13回」を公開

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【東大FFP第17期】なべたん日記・DAY_2 ”後編”

「てんこ盛りだけど、授業に必要な要素満載のDAY2もあと半分。”後編”でございます」の巻

さて後編ですが、その前に前編の復習!(笑)
大事なことは繰り返すことで、自然と身につきます(これも前回の話題にありましたね♪)

という前編は、
(1)「研究紹介」の振り返り
(2)今日の授業の目的と到達目標/全体の中での位置付け
(3)ワーク「統計学はやっぱり嫌い?」;教授にアドバイス
(4)大前提
(5)モチベーションのモデル「期待・価値・環境」
(6)クラスデザイン(授業設計)の意義
(7)ADDIEモデル(インストラクショナルデザインのモデル)
(8)クラスデザインシートの作成演習の第一歩・ワーク「達成目標の設定」
ということで、クラスデザイン(授業設計)のために必要な大前提と枠組みに関する知識のてんこ盛りでしたが、単にこれらの知識が栗田先生から受講生のみなさんに伝えられるだけでなく、受講生が考え、アウトプットする時間が常に用意されていました。それが「アクティブラーニング」ですね。ということで、後編では、DAY1・2で”経験してきた”アクティブラーニングについて学びます。

(9)アクティブラーニングの定義
冒頭はいきなり「アクティブラーニングって何? って言われたら、どう説明しますか?」という問いが示され、Sli.do(匿名性の高い質問ツール)に受講生のみなさんが回答し、全員で共有します(って、これ自体もアクティブラーニング♪)。みなさんの回答は実に多様。それを受けて、栗田先生からも「いろんな人がいろんなところでいろんなことを言っているんですよね」と、そのいろいろな定義から3つ紹介されました(スライド51)。
【ひとりごと】 アクティブラーニングという語自体は、日本では高等教育改革の場で示されていましたが、その後、初中等教育に向けても、「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について(諮問)平成26年11月20日」が発せられてから、急速に話題となり、その諮問に基づく議論ののちに生まれた「平成29年・30年改訂 学習指導要領」では、「主体的・対話的で深い学び」として示されました。
今回、DAY2で文科省の定義(2012)に着目すると、「教員と学生が」主語になっているのは、 a-意思疎通を図る b-一緒に切磋琢磨する c-相互に刺激を与える d-知的に成長する e-場を創る ことであり、「学生が」主語になっているのは、 f-主体的に問題を発見する g-解を見出していく となっています。過去の私は、b・c・d・の主語は学生だけで、eが教員の仕事だと、自分の活動と照らし合わせて、勝手に解釈していました。結局、試行錯誤していくうちに、b・c・dも、教員である自分自身も、気づけば学習者と共に主語になっていましたが、最初のこの定義と出会ったとき、丁寧に読んで自分の授業を捉え直していれば、試行錯誤はもっと短縮できたかなと、当時の生徒さんたちには申し訳なく思っています。

(10)アクティブラーニングのポイント
「アクティブラーニングを促す方法は、目的ではなく手段」
手段がいつの間にか目的にすり替えられてしまうことは、教育に限らず、よくあることですが(汗)、“前編”、そして以前の「なべたん日記」でもお伝えした「目的と到達目標」は極めて重要であり、それを手段とすり替えてしまうことは、活動そのものの価値を失うことにもなりますので、常に注意しておく必要があります。
栗田先生からは3つの大切な視点(問い)が提供されています。
・授業の目的・目標に対応しているか?
 ・学生の学びに寄与する方法になっているか?
 ・学生の視点で、彼らのモチベーション・学力・関係性への配慮があるか?
この3つの問いは、アクティブラーニングであるかどうかを問わず、授業の設計から実施の全てについて、絶えず授業者は意識していくべき大切なものだと思います。

(11)アクティブラーニングの有効性
双方向の授業と一方向の授業について、授業前と授業後の学生(成績上位・中位・下位)のテストスコアの比較がグラフ(スライド53)で示され、「そこから読み取れるものは何か?」という問いが投げかけられます。例によって、受講生のみなさんはSli.doへアウトプット。みなさんもぜひどうぞ♪
このグラフ自体はテストスコアですが、未修得者の減少やモチベーションの向上など、一方向の授業より、さまざまな面で成果が大きいことが、いろいろな研究結果によって支持されていることは、見逃せませんね。

(12)アクティブラーニングの危うさ
成果・有効性が示される一方で、危惧される状況も生じています。基本的には、(10)で示されたポイントで実施されているかどうかが鍵になりますね。
【ひとりごと】 現場の教員だった頃、いろいろな教室でアクティブラーニングと称される授業を拝見する機会がありました。自省も込めてですが、そういう中で、アクティブラーニングと称されるものの危うさを感じることは数多くありました。
そのとき意外と見落とされがちなのが、”前編”でお伝えした「クラスデザイン(授業設計)」です。アクティブラーニング、「主体的・対話的で深い学び」は、あくまでも手法ですので、それ以前にまず「目的や到達目標」が必要です。さらには、学習者の状況や学びの環境についての「分析」も欠かせません。ある小学校の先生が、そのような危うさは、「アクティブラーニング以前の問題(略して”以前問題”)ではないか」と指摘されたことは、実に的を射たものでした。今であれば、”前編”の「大前提」とADDIEモデルのAnalysis・Designが不十分ではないかと、お互いに言語化できますね。

(13)アクティブラーニングの方法
ここまでのアクティブラーニングの「前提」を踏まえて、具体的な方法の紹介と体験に進みます。
方法には、ミニッツぺーパー、自己評価、ピアレビュー、ブレインストーミング、ジグソー法、ケーススタディ、PBL、TBL、ポスターツアー、など、さまざまな規模や様態のものがあります。ここでは次の3つが丁寧に取り上げられました。
(A)問いかけ;学生に質問を投げかける
(B)Think Pair Share;テーマについて1人で考えて、ペアで共有する
(C)Peer Instruction;短い講義・予習→多肢選択問題ConsepTest実施→学生同士の議論→解説
ご興味のある方は、スライド56〜66をご参照ください。
いずれの方法を扱うにしても、(10)に示したポイントとも重なりますが、次のことが実施上の留意点として伝えられました。
1-手段の目的化を防ぐ。活動させることを目的としない
2-活動の目的および目標を明確にもつ
3-AL導入のメリットを説明する
共同で活動すると学習が促進されることも実証されています(Johnson & Johnson,2009)
4-指示出しは具体的にする
What、How、How longを明確にし、Whyも伝えるとより良い
大事なことは繰り返すの、原則ですね♪
【ひとりごと】 初中等教育の現場でも「グループワークでは、声の大きい生徒、積極的な生徒ばかりが発言し、そうじゃない生徒は聞いているだけになる」という話をよく聞きますが、学習者に応じた授業設計をしていくことが、そういう場合も大切になりますね。具体的な手法の一例として、(A)問いかけ、(B)Think Pair Share などを段階的に(スモールステップで)取り入れることで、安心して発言できる学びの場を創ることは可能になるでしょう。
一方で、このような一人や二人のアクティブラーニングでも、授業者は丁寧に設計・準備し、臨機応変の対応などが必要です。特に授業の開始段階では尚更ですね。授業が進むにつれて、学習者が要領を得ると共に、授業者からの支援を外していくこと(足場外し・これもいずれ出てきます)も大事になりますが、最初はやはり学習者の状況を把握しつつ、丁寧に支援していくこと(適切な足場かけ)が大事になるでしょうね。あ、再び自省を込めてです(汗)

(14)クラスデザインシートの作成
“前編”でもお伝えしましたが、「対象は初学者、自分の研究分野から1トピック、6分間の授業」の設計です。これがDAY6・7の模擬授業の設計にもなります。受講生のみなさんには、前半で設定した「到達目標」を実現するクラスデザインを、専用のシートを用いて作成します。ここまでに相当量の情報が提供されていますが、これらを具体的な形にしていく、ということでもありますね。まず15分間、個人でシートの作成に集中し、その後、ブレイクアウトルームで互いのシート(当然未完成でしょうが)を共有し、6分間ずつ説明し合うことで、アウトプットしながら整理をつけたり、問題点に気づいたり、新たな知見を得たりします。
この作成自体は5月5日締切の課題になりますが、まるごと課題にせずに、少しでも自分で取り組んだ後、一緒に学ぶ仲間と共有・対話できることは、全部がまるまる自宅での課題になることと比べ、さまざまな違いを生みます。ゆえに、この時間が短くてシートが完了しなくても、とても大切な15分間と交流の12分間になります。

(15)DAY2の授業デザインの解説
東大FFPで学ぶ内容が、常に、この授業自体で表現されていますので、まるごと体験しながら学んでいるのですが、そのことを実感する上でも、この「授業デザインの解説」は大切です。前の「なべたん日記」でもお伝えしましたが、毎回の授業の「型」でもありますね。今回は、
・DAY1の課題からDAY2の冒頭で「反転授業」を体験する
・クラスデザインで使う、授業の構成(導入・展開・まとめ)通りにDAY2も設計されている
・毎回、全体像(コースデザイン)を示してから各論や具体例(今回のテーマの位置付け)を示す
・最終成果物(クラスデザインシート)に、さまざまな課題や学びの内容は関連付けられている
・オンライン講座ではよく用いられる「相互評価」を課題として体験する
というポイントが示されました。まだ二回分ですが、授業のさまざまな内容が実に結びついていることが確認できます。

以上、DAY2”後編”もてんこ盛りでした。しかし、てんこ盛りになるということは、ここで伝え、可能な限り体験しておくことが、今後の授業に向けて必要だということですね。先ほど述べた通り、これまでのこともこれからのことに繋がっていきます。

今回は最後に【ひとりごと】を。
私自身の学校現場での活動を振り返ると、DAY2の内容をもっと早くに知っていれば、試行錯誤はもっと短くて済んだだろうに…と率直に思います。大学教員になるには免許制度がなく、教育の技法についても学んでいないので…というのが、この東大FFPの意義のひとつだと理解していますが、初中等教育の教員免許取得のカリキュラム(教職課程)の中で、このようなことを学んでいるのかと言えば、少なくとも私たちの世代にはありませんでした。同世代で一緒に取り組んできた教員仲間の多くは、私も含めて、これらの知見をほぼ現場での試行錯誤、学習者である児童や生徒さんたちとの関わりの中で、経験から学んできました。たぶん、しなくてもよい失敗も多数あったと心から反省していますが、それが現実でした。では、今はどうでしょうか。先にお示しした新しい学習指導要領になり、新しい教育が求められる中で、このような知見を、現場へ出る前に、あるいは、現場にいる間に学べる機会がどこかで提供されることを、切に願うばかりです。知識は実践に活用してなんぼ、ではありますが、知らないことによる悲劇は、どんな世界にもあります。知ることで救われることは本当にたくさんあると、咋期のDAY2が終わったとき、私は心底感じました。

ではまた。

あ、毎回くどいですが(汗)、東大FFPについては、次のリンク先にいろいろ紹介されていますので、ぜひご参照くださいね(大事なことは繰り返す、の図)。
(公式)東大FFPサイト
東大OCW 大学教育開発論(東大FFP2020年度開講分)
インタラクティブ・ティーチング(動画サイト)

大学総合教育研究センター
FFP担当 研究支援員 鍋田修身

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【東大FFP第17期】なべたん日記・DAY_2 ”前編”

「てんこ盛りのDAY2を字数少なめでは伝えられない結果、”前編”となってしまいました」の巻
「次回・DAY2からのなべたん日記は、…(中略)…字数は少なめで…(汗)」という言葉で終わった前回でしたが、この回は、栗田先生自身もおっしゃっているように、そして素人目でも、かなり「てんこ盛り」です。エッセンスだけをコンパクトに、と思ったものの、何故に「てんこ盛り」なのかを冷静に考えてみれば、それだけ重要だからなわけで…ということで、前編と後編に分けることにしました(汗)

(1)「研究紹介」の振り返り
最初は、DAY1の課題(「自分の研究紹介」の1分動画を作成し提出)をやってみての感想を共有します(今日は3名から)。前回とのつながりを意識し、まずはオンラインの中でアウトプット(自分の経験を語るのでハードルは低い)する感覚を呼び覚まします。そういう意味では、DAY2のアイスブレイク的なものでもありますが、「研究紹介」は次につながる大事な要素なので。それは後ほど。

(2)今日の授業の目的と到達目標/全体の中での位置付け
毎回の「型」ですね…「型」の話は、以前の「なべたん日記」で(笑)

(3)ワーク「統計学はやっぱり嫌い?」;教授にアドバイス
”とある教授”のお困り状態へのアドバイスを考えてくる、という前回の課題について、事前視聴の動画「モチベーション;期待価値理論」から期待・価値・環境の三要素の視点で、まずは、個人で考え、それをグループ共有のGoogle Slide上の付箋に書き出し、グループワークとして、互いの意見をとりまとめ、そして追加することはないかを検討します。
このワークは、この後出てくる「反転学習」の体験にもなっています。まずは経験し、それから解説を聞く、という順番、「型」になっていますね。そして、今回のDAY2の大きなテーマの1つである「モチベーション」への導入でもあります。

(4)大前提
学生が主体的に学んでいくためには、モチベーションの喚起と維持は重要かつ必須である」という言葉がスライドに示されています。
【ひとりごと】本当にこのことを(大)前提としているかどうかは、授業者のあり方として、かなり決定的な差異を生んでいるのではないかと実感することが、これまでの教育現場との関わりの中では、多々ありました。今一度、初中等教育の現場の方達とも話題にしていきたいですね。

(5)モチベーションのモデル「期待・価値・環境」
先のワークを受け、そして「大前提」を確認した上で、モチベーションについてのモデルの1つとして紹介されます(リンク1リンク2)。限られた時間での説明ですが、受講生の方達はすでに十分な予習がありますので、かなりすっと入ってくることになりますね。この項の最後のスライドにある、「授業者にできること;学生にとって高い価値を考える・学生の期待を高める工夫をする・協力的な環境をつくりだす」という3点は、大前提に基づく大切なポイントであり、模擬授業のデザインのベースになっていきますね。
モチベーションに関するモデルはいろいろあるそうですが、もうひとつ紹介されているのが ARCSモデルです。今回は、その動画の紹もありましたので、みなさんもどうぞ♪
【ひとりごと】相応に学習者のモチベーションは意識していたけど、こういう明確な項目立てがなかったので、やっぱりやっていたことはぼやけていたと思うし、明確な項目立てができていないと、振り返る視点もぼやけていたから、授業改善をモチベーションという視点で明確に進めたという意識が持てていなかったですね。今、もし授業者になったら、ここはかなり明確にして取り組みたいと思えるところです。初中等教育の現場のみなさん、いかかですか?

(6)クラスデザイン(授業設計)の意義
クラスとは毎回の授業のこと、コースとは一連の授業のまとまり)。身近な例としては、東大FFP(全8回)はコース、DAY1・DAY2…はクラス、ですね。
クラスデザインを行う意義について、次のようなことが示されていました。
・限られた時間を効率的に活用できる ・目的・目標に適った授業方法をとることができる ・授業改善を行いやすい ・工夫の共有が容易になる ・学生のモチベーションがあがる
【ひとりごと】初中等教育の現場の方達と「授業設計(クラスデザイン)の意義と、その意義は誰にとってのものか」という視点で議論をした際に挙がったのは、次の4つの視点でした。
 a-授業時間の効率的利用 (学習者・授業者)
 b-教授手法の計画的活用 (学習者・授業者)
 c-知識とスキルの共有 (授業者間)
 d-授業改善の効果的な対象抽出(授業者・授業者間)
aとbを、学習者にとっての意義ととらえているのは、今求められている「授業は、授業者が教える場ではあるけど、大切にしたいのは、学習者が学ぶ場である」ことを早速反映しているなと思いました。冷静に考えれば当たり前のことなのですが、これまでに見た光景としては、授業者だけが授業計画を知っていて、知らない学習者は、授業者から示されるものにただただついていく、というものでしたので。あ、自省を込めてです(汗)
しかし、話はここで終わらず、次のような意見が一人の小学校の教員から提案されました。
「dについても、授業が学習者にとって学びの場であるということからみて、学習者と(設計した)授業者の間で行われるべきものだろうし、学び合うことが当たり前になっていく中では、学び方を学ぶという視点でとらえると、学習者同士の間でも大切にしていくことですよね」
ということで、
 d-授業改善の効果的な対象抽出(授業者・授業者間、授業者-学習者間、学習者間)
と書き換えてみました。
実際に、私自身もその小学校の授業を定期的に拝見してきましたが、単元計画が教員から児童へ提案されていく中で、児童から「なぜその活動に3時(とき;授業単位、コマ数のことですね)使うんですか? これまでの感じだと2時で足りると思います」などの意見が出る教室でした。「学習者主体」という表現はあちこちに見られるようにはなってきましたが、授業者と学習者がそれぞれの立場を尊重しながらも、共に授業を創るという点で、大切な姿だと実感しました。

(7)ADDIEモデル(インストラクショナルデザインのモデル)
では具体的にクラスデザインはどのように進めればよいのか。そのひとつのモデルとして示されたのが、このADDIEモデルです。
詳細はリンク先の動画を見ていただければと思いますが、Analysis 分析→Design 設計→Development 開発/実装→Implementation 実施→Evaluation 評価→Analysis 分析→…というように、「次に活かす」”CLOSE THE LOOP ! ”で、ADDIEADDIEA…と繰り返されますが、反復なサイクルというよりも成長・変化するスパイラルなイメージですね。そして、単純な一方向の流れではなく、それぞれの間で絶えず行き来するとともに、Evaluationは、クラスやコースの最後に行って次に活かすだけでなく、ADDIの各段階に対して適宜行う評価、という意味も含まれています。(ここでは評価の方法として、自己評価・学生評価・第三者評価が示されますが、「評価」自体はDAY4のテーマとして、より深く扱われます)
【ひとりごと】先ほど述べた、初中等教育の現場の方達との「授業設計」に関する議論の中で、当然、このADDIEモデルをお示しして検討をしましたが、ほぼ参加者が口を揃えておっしゃっていたのが、
「Development は、俗にいう”教材研究”と称して、かなり丁寧に時間をかけ、また、Implementation は、”指導技術”と称して、結構、教員研修のテーマとしても取り上げている、つまり手間隙はかけているけど、Analysis とDesign は、やっていないわけじゃないけど、そんなに手をかけていなかったなと、実感しましたね」
ということでした。そして、
「Analysis とDesign がゆるゆるだと、結局、Development とImplementation に手間暇かけても、本当の意味で、授業者に見合った授業になっていなくて、教員が自分のやりたい授業をやっているだけになりがちだよね」
「そして、Evaluation は、学習者の出来不出来を評価ばかりになりがちで、不出来なときに、Development とImplementation の評価というか見直しはするけど、それ以上にならないのは、授業設計の段階で、Analysis とDesign がゆるゆるだからだろうね」
ということで、参加者のみなさんは、今一度、自分の授業設計において、ADDIEの視点でとらえ直そう、特に最初のAとDを強く意識してみたい、とおっしゃっていました。
そんなこともあり、現在、学校現場のみなさんにADDIEモデルを紹介して一緒に考えようという懇談の時間をつくっています。よろしければご連絡ください(と宣伝)。実際に、先に述べた小学校では、校内研修のテーマとして取り上げていただいております♪ 成果が楽しみですね♪

(8)クラスデザインシートの作成演習の第一歩・ワーク「達成目標の設定」
次は、いよいよDAY6・DAY7「模擬授業」の設計(クラスデザイン)の最初の一歩である「達成目標の設定」のワークです。ちなみに模擬授業は「自分の研究領域に関わる1トピックを学ぶ6分間」です。ここでもまた応募のときに書いた「研究紹介」が自己紹介、動画作成と経て、ずっとつながってきています。また「1トピックを6分間で」というのは、栗田先生曰く、授業の構成要素を含むぎりぎり最小の姿、とのこと。さまざまな模擬授業のスタイルやその研究がある中で、この東大FFPのコース設計(与えられた時間や人数などの環境条件)を踏まえた上での、最善の選択のようです。
このワークに先立って、授業を作る上で(ADDIEモデルにおいても)重要な「目的と到達目標」についての解説がありますが、これもやはり以前の「なべたん日記」で紹介しました。また、関連して紹介があった、Bloomの教育目標分類Finkの「意義ある学習」分類については、私の個人的な関心で、リンクを貼っていますので、ご興味があればどうぞ。
さらに、授業構成のためのヒントとして、ガニエの9教授事象、そして、知識の体系化(グラフィックシラバスの提示、意識的な知識の関連付け)などが紹介されます。ちなみに、意識的な知識の関連づけは、すでにDAY1・DAY2の中でも、繋がりは明確に示されてきましたし、この後のDAY3以降にも、ここまでの話がさまざまな形でつながっていきますので、引き続き、お楽しみに♪

さて、DAY2はこの後「アクティブラーニング」へと進みますが、最初に述べた通り、DAY2はてんこ盛りなので(加えて【ひとりごと】が長かったので・汗)、今回はこの辺で。

ではまた。(DAY3までに”後編”を出しま〜す! と宣言)

あ、前回も紹介しましたが、東大FFPについては、次のリンク先に解説や2020年度開講の授業等が紹介されていますので、ぜひご参照くださいね。
(公式)東大FFPサイト
東大OCW 大学教育開発論(東大FFP2020年度開講分)
インタラクティブ・ティーチング(動画サイト)

大学総合教育研究センター
FFP担当 研究支援員 鍋田修身